『絵草紙うろつき夜太』

08/12/23 | カテゴリー:蔵書紹介 | | 1 コメント

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先日のshop btfでのトークでも紹介した『絵草紙うろつき夜太』。
柴田錬三郎 横尾忠則による伝説の奇書。

↑昭和五〇年五月二〇日初版 集英社刊


1973年から1974年春にかけて『週刊プレイボーイ』(集英社)に、
カラーグラビア6ページずつ使って連載された時代小説があった。
小説=柴田錬三郎 挿絵=横尾忠則による『絵草紙うろつき夜太(やた)』

この小説の手のかけ方、金のかけ方、スゴさ、破天荒ぶり、ダメさも含めて
いろいろと言い伝え(?)が多いのだが、たとえば挿絵を描くにも、
映画のように俳優を呼び、衣裳を揃え、写真に撮り、それをもとに絵を描く。
俳優といっても、そこらへんの無名の役者ではなく、なんと、田村亮だ。
なぜ、田村亮なのかというと、同じ作者、柴田錬三郎の生み出した
名キャラクター眠狂四郎を田村正和が演じていることから、
その縁で夜太は弟の田村亮が起用されたということだろうか。
眠狂四郎というキャラクターがどれだけ人気があったかはそれを演じた俳優の
豪華ぶりで知ることができる。鶴田浩二、市川雷蔵、松方弘樹、平幹二朗、
田村正和、片岡孝夫(現在の片岡仁左衛門)なのだから。
眠狂四郎は『週刊新潮』に連載された小説。

↑YouTubeより「眠狂四郎 田村正和さん ご存知!円月殺法」
話を「うろつき夜太」に戻す。
ディテールにまで横尾イズムが行き渡っている名作である。
たとえば、カバーをはずすと、クロス装で、これは横尾さんに聞いたのだが、
この布をわざわざ浅草橋だかに探しに行って決めたのだそうだ。

それを開けると、見返しに同じ柄。ちょっと大きくなっている。

さらにそれをめくると、また一段階、柄が大きくなる。

随所に実験的な仕掛けがしてあり、それにも驚かされる。
たとえば、右のページは原稿そのもの。
左のページは校正紙をそのまま見せている。しかも話がつながっている。

小説の内容としては、めちゃくちゃというか、シュールというか、
ジョン・レノンが出てきたり(横尾さんと親交があったからだろう。
当時の『平凡パンチ』の表紙で横尾氏、オノ・ヨーコ氏、ジョン・レノン氏の
3人が写っているものがある)、原稿が書けないというシバレン氏の言い訳の
回があったり、そうかと思うと夜太はフランス革命に巻き込まれたり。
その破天荒ぶりは小説の内容だけではなくて、作られたプロセスも。
挿絵を描くためにわざわざ人気俳優を呼んで写真を起こしたというのは
まだまだ序の口。高輪プリンスホテルに部屋を2つ借りて、
作家の柴田氏と画家の横尾氏を1年間、缶詰にしたのである。
その1年間、横尾氏は奥様と過ごした時間よりも、
柴田氏と共にいた時間の方が長かったと、のちに語っている。

それぞれの部屋の位置まで挿絵に登場する。
こんな大がかりなことはさすがに集英社でも今ではできないだろう。佳き時代。
しかも『週刊プレイボーイ』連載とは今の若い人には想像し難いかもしれない。
『うろつき夜太』は最初、小説版が出て、あとから、この『絵草紙うろつき夜太』
という完全版が出た。古本で探すときは間違えないように。
サイズが週刊誌連載時のそのまま(しかも毎回「つづく」と書かれている)で
古書価も高い方が、こっちである。
その後、小説部分が2巻、挿絵部分が1巻に分かれて、集英社から
文庫化されたが、単行本・文庫本ともすべて絶版である。
(ネット古書店で探せば、それぞれ見つかるだろう)
先日、アーティストの束芋氏と話していて、たまたま
「うろつき夜太」の話になったのだが、彼女は学生時代に
横尾忠則氏のある展覧会場で、文庫版の「絵草紙 うろつき夜太」を
買ったそうである。
「小説がついてなかったので、なにがなんだかわからない画集だった」
けれども、気になったのでと言っていた。確かにわからないだろう。
「学生だったので、そんなに余裕はなかったけれど、文庫だったので」
とも。さすがに良い勘をしている。
この『絵草紙うろつき夜太』に影響を与えられた人は多いと思うが、
編集家・竹熊健太郎がある日のブログで語っていて、おもしろい。
柴田錬三郎の芸術的「言い訳」2008年3月14日 (金)
竹熊健太郎氏、相原コージ氏の共著で、これまた奇書の
『サルでも描けるまんが教室』のバックグラウンドには
『絵草紙うろつき夜太』があったのだなぁと理解した次第。
僕ももちろん大きな影響を受けているし、この本について、横尾さんに
話を聞く機会があり、根掘り葉掘り聞けて楽しかった。
ある仕事でこんなことを僕はしている。
BRUTUS 2002年2月1日号「もう本なんか読まない!?」

↑表紙。割付の状態をそのまま本番の表紙にしてしまった。

↑文字校正をそのまま誌面にしてしまった。

↑色校正(校了用)をそのまま誌面にしてしまった。

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1 コメント {コメントする}
  • キクカワ

    編集作業のお仕事図解、ありがとうございます。いつか、少しはできるようになるのでしょうか、とおもいますけれど。

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