電子メールもファクスも無かった頃

08/09/19 | カテゴリー:編集プロセス | | 2 コメント

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電子メールもファクスもなかったら、原稿はどうやってもらうのか?

当然、受け取りに行くのである。または郵便で送ってもらうこともある。

↑片岡義男さんの原稿(カラーコピー)。クリックで拡大可能。

約束をしておいて、自宅または約束場所に行って原稿をもらうのが編集者の 重要な仕事(だった)。その場で読んで、感想を言ったり、質問をしたり、 直してもらうところがあって、すぐに直してもらえるなら直してもらう。 たくさん手を入れる必要があれば、あらためて約束をする。 また、前回の原稿の反響や売れ行きについて報告したり、 今後の方向について打ち合わせをしたりする。編集部の近況を報告したり。 最近の編集者には想像しにくいかもしれないが、 執筆者と編集者の関係はそういうものだった。

↑拡大。なんと味のある文字であることか。インクの色も好きだ。


この原稿は80年代中頃の雑誌『ポパイ』のために作家の片岡義男さんが 書いてくれた原稿(のカラーコピー)である。 当時、片岡さんは「アメリカノロジー」という連載をずっと続けてくれていて、 当初はアメリカについてのエッセイ、のちに写真集やペーパーバックの書評の コラムを書いていた。 僕は担当ではなかったのだけれど、担当者が海外出張などで編集部を留守にすると 代役として、原稿をもらいに行く役目だった。 電話で約束をして、指定の場所に出向く。 ご自宅の場合もあれば、カフェなどの場合もある。 原稿を編集部に持ち帰ったら、コピーをとって、原本は保管して、コピーに (写植の指定の)赤入れをして、印刷所に送る。 校了になったときか、その号が出来上がったときにオリジナルの原稿は返す。 連載などの場合はある程度まとめて返す場合もある。 (そのとき僕は本来の担当者に渡して一括で返却してもらったのだと思う)。 僕は入稿用にモノクロコピーをとり、連載の臨時担当をした記念にカラーコピーを 取らせてもらった。というのもその回の原稿が僕の好きな写真家のひとり、 メイヤーウィッツ(片岡さんはマイエロヴィッツと書いている)についての 原稿だったからだ。 当時、カラーコピーはまだ高くて、B5やA4で1枚300?400円くらい したのではないかと思う。伊東屋などの大きい文具店とかまでとりに行く。 電子メールやファクスはおろか、ワープロさえ使っていない時代だった。 片岡さんの味のある万年筆の文字がとても温かいものに感じられる。 アメリカ写真、ニューカラーの旗手のひとりであるメイヤーウィッツは 特に写真集『Cape Light』で有名だ。その彼の中ではやや異色な写真集、 しかし、僕の大好きな『Wild Flowers』について書いてあるのが嬉しい。 このコラムはのちに単行本『紙のプールで泳ぐ』(新潮社刊)に収められている。 文庫化もされたけれど、どちらも絶版らしい。古本で簡単に入手可能だが。

↑1985年刊。装丁は日比野克彦氏。

 

外は木枯らし、でも部屋の中はエンドレス・サマー。なぜなら夏をとじこめた 素敵な本がたくさんあるから?ホックニーの画集、ドナルド・ダックの百科辞典、 ジェームス・ディーンのポートレート集、『エンドレス・サマー』というタイトルの 波乗りたちのヴィデオ、アロハ・シャツの歴史の本、ニューヨークの写真集…。 本とヴィデオの素晴らしい世界にあなたを誘う30のエッセイ。 (「BOOK」データベースより)

↑連載の時は写真集の表紙やいくつかのページを載せたが単行本では省略。

 

↑今読んでもなかなか含蓄のあるいいコラムである。

Cape Light』も『Wild Flowers』も『St.Louis and the Arch』も 持っているので、

本棚から見つかったら、おいおい紹介します。

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2 コメント {コメントする}
  • 斉藤

    いまは、まんが道のように「玉稿ありがとうございました!」とか言わないのでしょうか。
    片岡義男は、何にでも上手くブームに乗れる人なのかな、というイメージがありますね。
    写真もそうだったし、最近は素人のブログに”とてもインスパイアされた”小説を書いているようですが。
    膠着していて、有機的な希望を感じない(システマティっクで様式的な希望はあっても)という意味では、オタクが書く世界に近い小説を書く方だと思います。

  • 福井ルリ子

    今でも原稿を取りに行ったり・・・という仕事をしているのだと思ってました!
    そういえば、フクヘンの本棚って写真アップされたことありましたか?
    膨大な蔵書がどうなっているのか興味があります!
    ぜひとも。

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