第2回 図録放出会トーク報告

12/11/26 | カテゴリー:レクチャー/講義 | | No コメント

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11月23日(金・祝)〈アート好きによるアート好きのための図録放出会 Vol.2〉が

BoConcept(ボーコンセプト)新宿店で行われた。

参加者は不要になった展覧会図録を出品したり、半額以下の値段で購入でき、

収益は東日本大震災で被災した東北の文化財復興のためのプロジェクト

「Save Our Culture Heritage」へ全額寄付される。

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イベント当日、僕とアートブログ「弐代目青い日記帳」筆者のTakさんとの

トークイベントもやったので、その概要を報告する。



僕もこの日、展覧会図録や画集を200冊くらい出品したのだが、

トークのテーマが「出品しなかった(手元に残した)図録」。

進行中の仕事の参考資料や今後も仕事に使いそうなジャンル(特に写真とか

編集に関するもの)や個人的につきあいのある作家のものはやはり、

処分するわけにいかなかったり、親しいアーティストや学芸員、研究者の人たちが

関わった展覧会の図録や献呈署名のあるものは放出するわけにはいかない。

もちろん、一度手放したら、入手困難になりそうなものも。


たとえば、今、千葉市美術館で展覧会を開催中の須田悦弘さんが

数年前に1,000部作って、コレクターやジャーナリスト、美術関係者に

配ったこの私家版作品集。

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上は表紙、下は表4。

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須田さんは木彫で植物を作り、その巧みさと設置の企みで楽しませてくれる作家。

千葉市美術館で開催中の展覧会は須田さんの作品世界を見渡す絶好のチャンス。

この図録は、展示場所に作品が隠されているときがあるように、

1冊のうちのそれぞれどこかにさりげなく、サインが仕込まれている。

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僕がいただいたのはここの見開きにありました(探すの大変だった)。

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ほらね。「須田」って。


そういえば…

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ここで、クリスチャン・マークレーのことを思い出した。

膨大な量の映画の中から時計が出てくるシーンを実際の時間にそって繋いだ

24時間作品《THE CLOCK》の図録にサインをもらったとき、

彼はそのときの時間のシーンが載っているページに書いてくれた。


須田さんの図録に戻る。

これは、かつて千葉市美術館で行った展示だが、現在も同様の展示をしている。

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江戸時代の椿の屏風と椿の木彫作品をコラボして、

まるで屏風から花が1つ2つ落ちてきたみたいだ。


さて、僕も作家として参加した図録。これも放出するわけにはいかないので。

『126 POLAROID さよならからの出会い』

タイトルもなんだか意味がわかりにくいが、当初はポラロイドのフィルムが

製造中止になることを受けて、「さよならポラロイド」という趣旨の展覧会だったが、

その後、他社から互換フィルムが発売されることになったため、

こういうタイトルに変更になったいきさつがある。

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126人(組)の参加者による作品集。


主な参加者:

荒木経惟、杉本博司、港千尋、森山大道、飯沢耕太郎、石川直樹、石塚元太良、石田尚志、大木裕之

大日方欣一、かわなかのぶひろ、倉石信乃、斎木克裕、沢渡朔、新津保建秀、杉戸洋、鈴木志郎康

津田直、萩原朔美、藤代冥砂、元田敬三、森北伸、屋代敏博、若木信吾


アマゾンで買えますよ。


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下は僕のページ。カバーストーリーとして、SX70の到来を記事にした雑誌『LIFE』など。

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現代美術家の杉本博司さんも参加して、プリズムで分光した光の色を

撮影した作品が掲載されている。

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この作品はさらに発展させて、現在、エルメスのアーティストカレ(スカーフ)に使われている。

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今年3月、パリで発表されたときの会場写真。

 

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今年6月、アートバーゼルで発表されたときのインスタレーション。


杉本さんの撮影風景は僕が記録していた。朝の5時台とかです。

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東京。白金にある杉本さんのアトリエで撮影しています。


その作品はエルメスから写真集になっている。

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『Hiroshi Sugimoto: Couleurs de l'ombre』2012


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このアーティストカレ(7,000ユーロ)を購入した人と一部ジャーナリストに配られた。


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この写真集の一見開き分は僕が撮影した写真です。撮影中の杉本さんと彼のポートレート。


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これは杉本さんによるセルフポートレート。

完成したカレを持ってニューヨークの杉本さん設計の茶室〈今冥途〉にて。


杉本さんといえば、今年、7年ぶりに東京の美術館で個展を開きました。

「ハダカから被服へ」(原美術館)。そのときに作った図録というか、

〈洒落本〉がこれです。

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『洒落本 秘すれば花』

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945円。サイン入りも2,000円で販売していました。品切れ。


さて、今回、図録を整理していて、展覧会そのものを見た覚えのないものもあり

(送っていただくこともあるので)、一瞬考えてしまった1冊。

『FROM MINIMAL TO CONCEPTUAL ART』。

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よく見たら映画『ハーブ&ドロシー』のヴォーゲル夫妻のコレクションを展示したときの

図録でした。ワシントンナショナルギャラリー。

そうだそうだ、『ハーブ&ドロシー』の日本公開のときにトークイベントをしたり、

いろいろ協力したので、佐々木芽生監督が送ってくれたのでした。

展覧会として思い出せなかったけど、貴重な1冊。なぜなら・・・

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ハービーとドロシーのサインが入っているのです。

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日付けはちょっと間違っていると思うけど、

「Dear Yoshio, Best wishes, Dorothy Vogel, Herbert Vogel」って。

ハーブ(夫)は今年、亡くなりました。


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ニューヨークに住む元・郵便局員と元・図書館司書がコツコツ集めた膨大で、

重要な美術コレクションと彼らの物語です。


DVDがアマゾンで買えます。

現在、続編(完結編)の『ハーブ&ドロシー50×50』(仮題)が公開準備中。


さて、サイン本といえば、ということで、これを見せておきたかった。

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『JEAN-MICHEL BASQUIAT DRAWINGS』

ニューヨークのギャラリー〈メアリー・ブーン〉でやった展覧会のときの作品集。

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1,000部分サインがしてあります。

これはサインをもらったのではなく、日本で買ったのだけれど。

伝説のアーティスト、バスキア参上です。


バスキアはドラッグのオーヴァードーズで亡くなったと言われていますが、

同時代の病、AIDS(HIV)をテーマにした写真展の図録がこれです。

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『love's body|art in the age of AIDS』(東京都写真美術館 2010年)


フェリックス・ゴンザレス=トレス(1996年にAIDSにより他界)の作品も載っています。

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フェリックス・ゴンザレス=トレスといえば、ブログやトークで何度か紹介した作品集。

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『A Selection of Snapshots Taken by Felix Gonzalez-Torres』


フェリックスが生前親しい友人に送っていたスナップ写真(裏にコメント付き)を

彼の死後、友人たちが持ち寄って作った写真集。

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フェリックスとパートナーと3匹の猫が「Family」




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日常のスナップやマイアミの風景。


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お誕生日ケーキや花束。せつない。


アマゾン マーケットプレイスで買えます。


R.I.P.話題をもうひとつ。

(R.I.P.というのはラテン語 Requiescat in Pace の頭文字で「安らかに眠れ」の意味)

先日、急逝したキュレーター東谷隆司氏の手がけた展覧会「時代の体温」

(世田谷美術館 1999年)の図録が2冊あったので、1冊放出しました。

けっこう入手困難だと思います。

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『時代の体温』。図録は予約制でした。

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奈良美智さん、田中敦子さん、大竹伸朗さん、東恩納裕一さん、根本敬さんらが参加。

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大竹伸朗さんに作品の図面。ページのほとんどがスミ版1色刷です。


さて、話題をやや変えて、僕の仕事の関係上、手元に置いておいた図録です。

サントリー美術館での蔦屋重三郎の展覧会の図録。

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『歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎』(サントリー美術館 2010年)


江戸時代、一世を風靡した編集者である彼の資料として保存してあります。

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蔦屋重三郎についての本は何冊かありますが、

これだけ図版豊富なのは展覧会図録ならではです。


さらにサントリー美術館の図録からもう1冊。

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『鳥獣戯画がやってきた!』(サントリー美術館 2007年)


プラスティックカヴァーをはずすと、

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こんな感じ。


歴史の教科書にも必ず載るこれだけ有名な絵なのに、この絵巻だけを扱った

資料は意外に少ないようで、『日本の美術』(至文堂)の300号くらいだと思います。

しかし、この展覧会があって、それ以後はこれが決定版資料になりました。

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《鳥獣人物戯画甲巻》(高山寺蔵、東京国立博物館寄託)より


さて、自慢の図録コレクションというか、貴重図録の話に移ります。

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『若冲』(京都区立博物館 2000年)

一時ほどではないですが、今でもけっこうプレミア価格で取引されています。

定価は2,300円ほどだったはずですが、かつては2万円くらいしました。

今では5,000円くらいで買えるかな。

小学館から出た『若冲大全』はこの図録をベースに編集している豪華本です。

まあ、ちょっと高価な本ですね。良い本ですが。

若冲に関しては手頃な本もたくさん出ていますので、

本屋さんで手にとってみてください。


さらに図録コレクション自慢は続く。

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『BAUHAUS』(西武美術館 1995年)


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日本語で書かれたバウハウスの資料としては一級品だと思います。


現在、21_21デザインサイトでアートディレクター/デザイナーの田中一光さんの

展覧会が開催されていますが、これは東京都現代美術館での展覧会のもの。

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『田中一光—われらデザインの時代』(東京都現代美術館 2003年)


田中一光さんが亡くなってからちょうど10年が経ちますが、

昭和〜平成の日本のグラフィックデザインを語るときに必ず名前の出る人です。

できれば、21_21での展覧会をお見逃しなく。


彼の仕事のひとつを紹介しておきました。

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『別冊太陽 琳派百図』(平凡社 1974年)

美しい色使いや、華麗な意匠、品のある構成で田中一光氏は現代の琳派と

しばしば称されます。彼が構成も手がけた1冊。



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「田中一光とデザインの前後左右」展は21_21デザインサイトにて1月20日(日)まで。


図録『田中一光—われらデザインの時代』に戻って、

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こういう作品がまさに現代の琳派と呼ばれる所以。


次はまさに琳派の話。

今年、メトロポリタン美術館から尾形光琳「八つ橋図」が一時帰国し、

根津美術館の国宝「燕子花図」と並べて展示される機会があった。

(本来の予定では昨年の展示だったが、震災の影響で1年延びた)

そのときの図録がこれです。

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で、このサイズ、

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出光美術館の風神雷神図屏風展の図録と同じ大きさでした。

この展覧会は

俵屋宗達《風神雷神図屏風》(国宝。建仁寺蔵、京都国立博物館寄託)、

尾形光琳《風神雷神図屏風》(重要文化財。東京国立博物館蔵)、

酒井抱一《風神雷神図屏風》(出光美術館蔵)を一同に集めた

画期的な展覧会でした。

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『国宝風神雷神図屏風』(出光美術館 2006年)


この図録がなかなか工夫してあって、

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宗達の絵の上に透明フィルムで光琳の描いた風神雷神を重ねたりして、

写したときの感じを良く表しています。

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こういう凝った図録は後日、増刷もされることがないので、

気づいたら買っておかないといけません。

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また、僕などは雑誌や単行本の仕事で、

こういう見せ方がいいですよ、という提案をするときのためにも

その参考、前例として持っている必要があります。

なので、手放すわけにはいきませんでした。


さて、ここからはちょっと変わった図録をいくつか。

下の写真、左がある展覧会図録です。右は大きさがわかりやすいように

文庫本をならべておきました(雷神はとくに意味はありません)。


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『旅 ――〈ここではないどこか〉を生きるための10のレッスン』(東京国立近代美術館 2003年)


パスポートをイメージした図録でした。

入場時に自分でスタンプを押すなど、旅の気分を盛り上げる展示。

チラシや入場券も凝っていたのが印象的です。

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フィシュリ&ヴァイスのAirportシリーズも展示された。

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同じくAirportシリーズより。日本の空港です。


次はこんなものも。

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『ギフト・オブ・ホープ 21世紀アーティストの冒険』(東京都現代美術館 2000-2001年)


箱の中にポスターが入っています。

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ヤノベケンジ、八谷和彦、島袋道浩、ナウィン・ラワンチャイクン、

スラシ・クソンウォンらが参加している。


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『東京-建築・都市伝説 TOKYO ELEVEN PARADISE』(江戸東京博物館 2001年)


なんとこれは、とびだす絵本(ポップアップ本)形式の図録なのでした。

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ほらね。



アーティストによるポップアップ本といえば前にも紹介したけど、

このアンディ・ウォーホルのINDEX BOOKが有名。

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缶詰が立ち上がったり、

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飛行機が現れたり。

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さて、1冊、興味のある人は買っておいた方がいいですよという情報。

昨年のTAKEO PAPER SHOWのテーマは本。

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さまざまなジャンルの人に思い入れのある紙の本を聞いてみてます。

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その本を写真と共に紹介していますが、この図録自体が3冊の本を合わせて

1冊の本にしているユニークな作り。

こういう本も増刷されることはないので、品切れやプレミア付きになる前に

入手しておくことをお薦め。

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参加者はこのような人たちです。僕も入っています。

それぞれの人がどんな本を紹介したかはぜひご覧になって確認を。


パリの日本文化会館で12月15日(土)まで開催中の

「笑いの日本美術史—縄文から19世紀まで」展の図録。

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『WARAI: L'HUMOUR DANS L'ART JAPONAIS』

森美術館で開催された「日本美術が笑う」展のコンセプトを元に

展示品は新たに編成し直して作られた展覧会。


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監修の明治学院大学・山下裕二先生。木喰の仏像と。


以上のような話をライブで、より詳しく、やや過激に(書くのと喋るのは違うからね)

お話ししました。「弐代目青い日記帳」Takさんとやりとりしながらね。


ブログやツイッターに書けないこともトークでは話しますので、

興味のある人はぜひ一度お越しください。

近々、こういうレクチャーをやります。

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これまで杉本博司さんについていろいろ取材してきました。

杉本さんの作品について、また杉本さんとの仕事について話します。

(杉本さんご本人は登場しません)。

 

「本・現場・美術」~〈フクヘン。〉の仕事~

第3回:杉本博司さんとの仕事

12月21日(金)青山ブックスクール(青山ブックセンター本店内)


さらに最新情報(予定)ですが、

2月4日(月)に「会田誠と日本美術」(仮)というレクチャーを

アカデミーヒルズでやらせていただきます。

まだ、決まったばかりですので、追加情報や詳細はツイッターやブログでお知らせします。

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