19世紀フランスを代表する壁画家として知られるピエール・ピュヴィス・ド・
シャヴァンヌ(1824-1898)の展覧会
「シャヴァンヌ展|水辺のアルカディア ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの神話世界」が
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中だ。
3月9日(日)まで。会期中無休。
10:00-19:00(入館は18:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
入館料:一般1,400円 大高生1,000円
説明をする本展監修者・美術史家のエメ・ブラウン・プライス氏
背景は《諸芸術とミューズたちの集う聖なる森》
1884-89年頃 油彩・カンヴァス
シカゴ美術館蔵 93×231cm
Potter Palmer Collection 1922.445
Photography©The Art Institute of Chicago
シャヴァンヌはフランスの主要な建物の壁画装飾を次々と手がけた。
彼が若い頃に感銘を受けたイタリアのフレスコ画を連想させる落ち着いた色調で
描かれた作品は、古来から謳われて来たアルカディア(理想郷)を思わせる。
そして、描かれた世界は含意に満ち、象徴主義の先駆的作例と言われている。
左《自画像》1857年 油彩、カンヴァス プティ・パレ美術館、パリ
右《アレゴリー》1848年 油彩、カンヴァス クライスラー美術館、ノーフォーク
この人物達については諸説あるが、左からルネサンス期の批評家・伝記作者である
ヴァザーリ(『美術家列伝』の著者)、聖フランチェスコ、ダンテ(『神曲』の作者)
であるという説が有力だ。違う時代の英雄をまとめて描くことがあるらしい。
手がけた壁画の控えとして、油彩画を描いている。
右《警戒》1866年 油彩、カンヴァス 個人蔵
左《幻想》1866年 油彩、カンヴァス 大原美術館
大原孫三郎が児島虎次郎を介して1922年に購入し、1930年の大原美術館開館時に
公開された。もとは計4点で構成され、クロード・ヴィニョンのパリにある家の
サロンを飾っていたものだそうだ。
左《古代の光景》1885年頃 油彩、カンヴァス カーネギー美術館、ピッツバーグ
中《諸芸術とミューズたちの集う聖なる森》1884-89年頃 油彩・カンヴァス
シカゴ美術館蔵
右《キリスト教の霊感》1887-88年頃 油彩、紙(カンヴァスで裏打ち)
スミソニアン・アメリカ美術館、ワシントンD.C.
リヨン美術館階段の壁画装飾《諸芸術とミューズたちの集う聖なる森》は1884年の作で
全長4.6×10.4mの巨大なもの。リヨンはフランス第2の都市でシャヴァンヌの生まれ故郷。
シャヴァンヌは壁画を制作したあとで、その縮小作品を作る。
それが上記のシカゴ美術館蔵の油彩作品である。
シャヴァンヌが日本に与えた影響について考えるとき、最も重要なのは、
日本近代洋画の礎を確立した黒田清輝(1866[慶応2]-1924[大正13)]である。
黒田は10年間のフランス留学の最後の年である1893年3月にシャヴァンヌに
直接会ってアドバイスを受けている。
そのとき、シャヴァンヌは国民美術教会(ソシエテ・ナショナル・デ・ボザール)
会長であった。
黒田清輝:
左《昔語り図画稿(草刈り娘の足)》1896(明治29)年 木炭、紙
左から2番目《昔語り図画稿(草刈り娘の顔)》1896(明治29)年 木炭、紙
中《昔語り図画稿(草刈り娘全身像)》1896(明治29)年 木炭、紙
右から2番目《昔語り図画稿(草刈り娘)》1896(明治29)年 油彩、カンヴァス
右《昔語り図(構図II)》1896(明治29)年 油彩、カンヴァス 東京国立博物館
オーギュスト・ロダン《ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌの胸像》
1890-91年 ブロンズ 国立西洋美術館(松方コレクション)